「口臭の原因物質である硫化水素」を産生する酵素の立体構造と反応機構を解明

平成3031

「口臭の原因物質である硫化水素」を産生する酵素の立体構造と反応機構を解明

 

発表のポイント:

  • 口臭の原因物質である硫化水素を産生する酵素Fn1055の立体構造を、世界で初めて決定しましました。
  • 酵素反応をミリ秒(1000分の1秒)オーダーで追跡し、この酵素が硫化水素を含む生成物を産生する詳細な機構を明らかにしました。
  • 一連の研究成果は、歯周病菌における硫化水素産生機構の理解につながるとともに、新たな洗口液成分開発への貢献が期待されます。

 

背景:

歯周病菌により産生される硫化水素は、口臭の原因となるだけでなく歯周病を悪化させる要因の一つであることが知られています。口腔内(口の中)の硫化水素濃度と歯周病の進行度の間には高い相関があり、臨床現場では、患者の口腔内の硫化水素濃度を測定し、口臭や歯周病の程度を判定する指標としています。

口腔内で検出される硫化水素は、歯周病菌が作る「硫化水素産生酵素」により、主にシステインというアミノ酸から作られます。したがって、これら酵素の反応機構の解明は、口臭や歯周病に関与する硫化水素産生の根本的な理解につながります。

 

研究内容と成果:

岩手医科大学薬学部の毛塚雄一郎助教、野中孝昌教授、琉球大学理学部の石田哲夫教授および愛知学院大学歯学部の吉田康夫准教授からなる研究グループは、硫化水素を産生する能力が特に高く、健常者を含め多くの成人で検出される歯周病菌であるFusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム ヌクレアタム)に特有の硫化水素産生酵素Fn1055に着目し、この酵素がシステインから硫化水素とセリンを生成する反応機構を明らかにしました(図1)。この酵素は、最大で1秒間に約4回の速さで反応を行います。研究グループでは、酵素の一部であるピリドキサール5’-リン酸(PLP)の化学的な変化を指標にして、この反応をミリ秒(1000分の1秒)の間隔に分割して連続的に追跡しました。また、決定した反応前の酵素の立体構造(図2)を参考にして、酵素の反応が途中で停止するような仕掛けを施すことで反応の中間状態(α-アミノアクリル酸中間体複合体)の構造解析にも成功しました。反応には酵素の構造変化を伴うことが強く示唆されました。このようにして得た結果を総合的に解釈することで、硫化水素産生酵素の中でも、極めて特徴的な反応を行うFn1055の詳細な反応機構が明らかとなりました。本研究から得られた成果は、硫化水素産生酵素特異的な阻害剤の開発に寄与すると考えられ、新たな洗口液成分の開発にもつながることが期待されます。

 

本研究の成果(全文)は、2月16日に英国科学誌Biochemical Journalに掲載されました。

https://doi.org/10.1042/BCJ20170838

 

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて行われました。また、X線結晶構造解析のための回折実験は高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリー(つくば)において実施されました。

図1 Fn1055の行う反応(上)とその機構の概要(下)

図2 Fn1055の立体構造

研究に関する問い合わせ先:

岩手医科大学 薬学部 構造生物薬学講座 助教

毛塚雄一郎(けづかゆういちろう)

Tel: 019-651-5110 内線5282

E-mail: ykezuka@大学ドメイン(大学ドメイン:iwate-med.ac.jp)

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