2018年11月16日
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スポット薬学講座 No. 10 臨床薬学講座臨床薬剤学分野

とろみ調製用食品の功罪

〜とろみ調製用食品を使ったお薬の服用には要注意〜

 

臨床薬学講座臨床薬剤学分野 教授 工藤 賢三

 

とろみ調整用食品(とろみ剤)をご存じですか?とろみ剤は、食べ物や飲み物に加えて混ぜることにより、適度なとろみを手軽に付けることができ、飲食物などを飲み込みしやすくする食品のことです。加齢や疾患などが原因で、飲食物を飲み込む力が弱くなったり、飲み込む神経の働きが悪くなったりすると、飲食物を摂取する際に上手に飲み込めずに、むせることや誤嚥を起こすことがあります。特に、高齢者の場合、誤嚥性肺炎を起こしても自覚症状がわかりづらく発見が遅れ、結果として重症化する割合の多いことが知られています。医療や介護の現場では、この怖い誤嚥を防ぐために、食事の姿勢に気を付けたり、調理の工夫や飲食物にとろみを付けて飲み込みを助けるための工夫を行っています。とろみ剤は、飲食物に加えることで簡単にとろみが付けられるため食事の際に利用されています。
食事をした後には、お薬を服用することも多いと思います。本来、お薬は水かぬるま湯で服用することになっていますが、嚥下の問題から、とろみを付けた水に混ぜてお薬を服用している場合もあるようです。最近、このとろみ剤を使用して錠剤を服用した患者の便中に未崩壊の錠剤が観察されたことが報告され、とろみ剤が錠剤の崩壊に影響することが示唆されました。崩壊とは、錠剤などの内用固形製剤を経口投与したときに、消化管内において製剤に水(液体)が浸入し、形が崩れることをいいます。その後、崩壊した製剤が多数の小さな粒子になる分散やその粒子から薬が溶け出る溶出の過程を経て薬が体内に吸収されていきます。崩壊は、内用固形製剤の効果を発揮するための大切な最初のステップになります。
当講座では、富田隆准教授を中心として、介護施設等でのとろみ剤の使用実態や内用固形製剤へのとろみ剤の影響の薬剤学的、薬物動態学的な研究を行っております。その結果、とろみ剤は速崩壊性錠剤の崩壊に影響すること、実際に速崩壊性錠剤からの薬の溶出やその効果に影響することが徐々に明らかとなってきました。現在、岩手大学農学部や企業との共同により崩壊抑制機序の解明を行うと共に、お薬の服用にも安心して使用できるとろみ剤の開発を目指して研究を行っているところです。
皆さんの周りで、とろみ剤を使ってお薬の内服をしている方がおられれば注意をして頂けると有り難く存じます。また、ご質問等があれば、当講座に遠慮なくお問い合わせ下さい。