2018年11月16日
  • 薬の専門家になろう!

スポット薬学講座 No. 5 創剤学講座

くすりには様々な形があり、当講座はこの剤形を研究・教育の主体に据えています。剤形は厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会を経て定めた医薬品の規格基準書である日本薬局方に規定されており、現在、70剤形以上が収載されています。この中にニトログリセリンに代表される舌下錠があります。舌下錠は口腔粘膜より速やかに有効成分が吸収され、門脈を経ずに循環血に到達するので肝初回通過効果を回避できます。投与数分で最高血中濃度に到達し速効性を有することより、ニトログリセリン舌下錠は狭心症発作時の症状改善に用いられます。
ニトログリセリンはダイナマイトの原料であり、この製造工場で働いていた狭心症患者が、工場では発作が出ないことより治療薬となったと言われています(諸説有)。しかしながら非常に揮散性が高く、有効成分が減少するとともに布、紙等に吸収され爆発性を有するため、舌下剤の入った瓶には紙を入れないこと、上着の内ポケットにしまわないこと、などの制約がありました(本錠剤は2015年販売中止)。一方、現在使用されているニトログリセリン舌下錠であるニトロペン舌下錠はこの不便さを解消するために製剤学的な工夫がなされています。
ところで、特定保健用食品であるヘルシア緑茶には、エピガロカテキンガレート(EGCG)が高濃度含まれていますが、EGCGは緑茶の苦み成分ですので、そのままでは非常に苦い飲料となります。実は、この苦みをマスキングするためにニトロペン舌下錠と同様の方法が用いられています。 D-グルコ-スを環状に6 ~ 8個結合させたシクロデキストリン(CD)は、その環の中に脂溶性薬物を取り込み包接化合物とすることができます。グルコ-スは水溶性ですので、難溶性の薬物をCDに包接することにより、溶解性の向上が見込めます。ニトログリセリンの場合、CDと包接化合物にすることにより、その揮散性を抑制し安定化を図ることができます。同様にCDでのEGCG包接化がEGCGの苦みを抑制することとなります。この方法はチューブタイプの練わさびの辛味保持やあるサプリメントの吸収改善にも利用されています。
このような身近なものにも利用されている医薬品の製剤的工夫は、治療効果改善や服薬コンプライアンスの向上に用いられています。